ビジネスにパソコンは必須ですが、こんなことを経験したことはありませんか?

  • 「あれ?あのデータどこにあったっけ?」
    ※必要なデータがどこにあるのか分からない・・・。
  • 「前修正したはずなのに…。これって古いデータ?」
    ※どのデータが最新版なのか分からない・・・。
  • 「このUSBにデータ入っているから、修正してもらえる?」
    ※いつもUSBメモリスティックを抜き差ししてデータをやり取りしている・・・。

これらの問題は特に複数のパソコンで作業したり、複数の人が同じデータを使ったりすることで発生します。今回は複数のパソコンでデータをリアルタイムに共有する方法を紹介します。

A社の事例紹介

これまでの状況

A社では、パソコンを使う従業員が数名いました。WordやExcelなどのソフトを使って、それぞれの従業員がデータを作成・修正していました。作成・修正したデータはUSBメモリスティックで別の従業員に渡し、別のパソコンにコピーして使っていました。

冒頭にあるように「あれ?あのデータどこにあったっけ?」、「前修正したはずなのに…。これって古いデータじゃない?」などが多発している状況でした。担当者が休んだり、退職してしまったりしたときは、データを探すのに一苦労でした。

コメント

このように、新旧データが複数のパソコンに入っているケースはよくあります。急に必要になったデータがどこにあるか分からない、データを消去していいのか分からないのでそのままにしてある、などの声をよく聞きます。

他にも、パソコンにデータを保管するのではなく、USBメモリスティックにデータを保管していることもありました。USBメモリスティックはデータの持ち運びのために一時的に使うもので、長期間のデータの保管には不向きです。

対応策

目標は「リアルタイムでデータを一元管理する」です。

パソコンをインターネット回線につないで使っているか、社内ネットワーク(ローカルネットワーク)で使っているかの条件により、選択候補が変わってきます。また、USBメモリスティックや外付けハードディスクの利用は、1台のパソコンにしか同時に接続できないため、選択肢から除外しました。

選択肢①:NASを利用する

NAS(Network Attached Storageの頭文字を取ったもので、ナスと呼びます)とは、ネットワーク(LAN)上に接続することができるハードディスクのことです。同じネットワーク内であれば、複数のパソコンから同一のNASにアクセスすることができます。つまり、NASにデータを保管しておけば、同一ネットワーク内の複数のパソコンからアクセスしても、リアルタイムで同じ最新データを利用することができます。

技術的な話

IPアドレスの固定化

「IPアドレスとは、ネットワーク上の機器(スマホやパソコンなど)に割り当てられるインターネット上の住所のこと」、とよく例えられます。ネットワーク上の機器に重複することなく割り振られる番号です。

複数のパソコンから共通の機器を使う場合(本事例ではNASを使う場合)は、IPアドレスを固定する(プライベートIPアドレスを割り振る)ほうがよいでしょう。

IPアドレスを固定しない場合、IPアドレスが変わってしまう可能性があります。IPアドレスが変わってしまうと、パソコンからNASへのアクセスができなくなる(再設定が必要となる)こともありますので、通信の安定性を確保するためにIPアドレスを固定します。

また、IPアドレスが重複すると通信エラー(住所不明のようなもの)となるため、パソコンやNASだけでなく、共通で使う機器(プリンタやIT機器など)にもプライベートIPアドレスを割り振って管理することが多いです。共通で使う機器は住所をはっきりさせておくほうが便利です。

RAIDの種類

RAID(Redundant Arrays of lnexpensive Disksの略)とは、 複数のハードディスクを仮想的にひとつのドライブのように認識させる技術です。複数のハードディスクにデータを分散して書き込むことで処理速度の向上を図ったり、ハードディスクが故障したときにデータを復旧したりすることができます。

RAIDにはいくつか種類がありますが、比較的安価な2種類を紹介します。

RAID0

複数のハードディスクに同時に分散して読み書きするモードです。ディスク容量を十分に活用することができ、高速化に適していますが、ハードディスクに障害が発生するとデータはなくなってしまいます。

RAID1

複数のハードディスクに同じデータを書き込むモードです。ミラーリングともいいます。片方のハードディスクが損傷した場合、もう1つのハードディスクからデータを復旧できるため、障害時の備えとして有効です。デメリットは、データ容量は50%以下になってしまうことです。

選択肢②:クラウドストレージサービスを利用する

クラウドストレージサービスとは、インターネット上にデータを保管するサービスのことです。Googleドライブ、Dropbox、AmazonPhoto、iCloud、OneDrive、CleativeCloudなど様々なサービスがあります。

基本的には、IDとパスワードを発行しアカウントを登録します。そして、同一アカウントでログインすれば、インターネットを介して同じデータを扱える、ということになります。

無料プラン・有料プランがありますが、ストレージ容量(データの保管容量)を増やしたい場合は、有料版にする必要があります。

オフラインで使える機能もありますが、インターネット回線がなければ十分に機能できないというデメリットがあります。また、1日に大量のデータをクラウドストレージにアップすると、インターネットプロバイダから速度制限を設けられることがあるため、注意が必要です。

本事例での対応

A社では、対応策②のクラウドストレージサービス(Dropbox)を使うことにしました。

クラウドストレージ(Dropbox)を選んだ理由

  1. 共有したいデータは、容量が少ないWord文書などのデータがほとんどであり、無料版(2GB)で十分であったため
  2. デスクトップアプリを使うことで、通常のパソコン操作と同じように扱えるため
  3. 事業者はセキュリティを気にしていたが、共有したいデータに機密情報は含まれなかったため
  4. 共有したい端末は合計3台で無料版(3台まで)を活用できるため

導入成果

リアルタイムでデータを共有できるようになったため、必要なデータをすぐに見つけられるようになり、常に最新版のデータを使えるようになり、USBメモリスティックの抜き差しも必要なくなりました。

A社の従業員も設定時は不安そうでしたが、「これは便利ですね」、「こんなことができる時代になっていたんですね」など、感激・喜びの声が上がっていました。なかには、「パソコンが壊れた時もクラウドにデータがあれば安心ですね」という方もいました。

注意点は、ITツールは単に導入すればいいというだけではありません。従業員(ヒト)が使うことになるため、IT活用のための教育やオペレーション改善も必要になってきます。

補足:必要なデータをすぐに見つけられるようにするために

必要なデータをすぐに見つけられるようにするためには、クラウドストレージサービスを導入するだけでは実現できません。データ管理の運用ルールを設ける必要があります。

A社の場合、従業員が好きなようにデータを保管・活用していたため、デスクトップ上にデータが散在していたり、関係ないデータが一つのフォルダにまとめられていたりしました。

フォルダの階層構造は重要です。階層ごとに関連するフォルダ・データを入れていくようにしましょう。

ファイル名の付け方については、例えば「YYYYMMDD_ファイル名」などのように、必ず西暦日付を頭につける、などのルールを設定します。

フォルダ名は、「100.出張管理」、「200.給与計算」、「300.立替金」などのように頭に数値を入れておくと、毎回決まった順にフォルダが整列されるため(ソート順を設定)、探しやすくなります。

100番おきに採番している理由は、将来的に「250.賞与計算」などのように、関連するフォルダを新しく作りたいときは間に入れることができるようにしておくためです。