福岡県生活衛生営業指導センター「生衛ふくおか」(2024年秋季号)出前相談の経営サポート事例
▲福岡県生活衛生営業指導センター「生衛ふくおか」2024年秋季号より

福岡県生活衛生営業指導センター様では、コロナ禍からの復興、物価高騰・賃上げ等への対応に取り組む生衛業の方からのご相談に対して、中小企業診断士、税理士などの専門家を派遣する「出前相談」を行っています。

2023年秋~2024年4月の出前相談では、北九州市小倉南区のファミリークリーニング様の経営サポートを実施しました。

当該内容が「生衛ふくおか」2024年秋季号に掲載され、詳細な内容をご紹介いただきました。

下記、掲載内容を引用してご紹介します。

「出前相談」による経営サポートの事例

従業員との個別ミーティングを実施 任せることでやる気も効率もアップ

当指導センターでは、コロナ禍からの復興、物価高騰・賃上げ等への対応に取り組む生衛業の方からのご相談に対して、中小企業診断士、税理士などの専門家を派遣する「出前相談」を行っています。材料費高騰の対応を苦慮していた営業者の方が、専門家のアドバイスを受けながら、効率アップに取り組んだ事例を紹介します。

小倉南区ファミリークリーニング

企業のプロフィール

ファミリークリーニング

  • 店長:神林 章二 氏
  • 所在地:北九州市小倉南区
  • 業種:クリーニング業
  • 従業員:7人

01 相談のきっかけ

コロナ禍と物価高の不安

今回ご相談があったのは、北九州市小倉南区にある「ファミリークリーニング」の店長をされている神林章二さんです。同社は、創業50年を超える老舗クリーニング店です。クリーニング業界は、外出の自粛というコロナ禍の影響を大きく受け、コロナ禍が落ち着いても、なかなか需要が回復しないという状況が続いています。そのなかで、原油高、材料費高騰の波が襲ってきて、神林さんも対応に苦慮していました。クリーニング組合から「出前相談」のことを知り、打開策を求めて、当センターに相談がありました。

02 現状分析・課題

自己診断から見えてきた課題

相談を受けた当センターでは、中小企業診断士の原田智弘氏(以下、原田診断士)に対応を依頼しました。対応のスタートはお店の現状を知ることで、そのために行ったのが「自己診断」です。厚生労働省が作成した「生産性向上ガイドラインのチェックリスト」を利用して、50項目について経営者に自己診断を行ってもらいました。その結果、①経費、②効率的作業、③人的ミスという3つの課題があることがわかりました。

その結果をもとに、原田診断士がヒアリングを行い、さらに深掘りをしていきました。強みとして、①地元に多くの固定客を抱え、②とくにしみ抜きの技術は定評がある一方で、課題として、③材料費高騰を価格に転嫁する、④工場で働くパート従業員のスキルアップを図るという2点が浮かび上がってきました。

03 改善計画と実行

専門家といっしょに計画を作る

こうした課題を解決するために、改善計画を作りました。ここでのポイントは、①経営者が主体となって作る、②専門家と話し合いながらいっしょに作ることです。そうすることで、企業の実状にあった計画となり、実効性が高まります。

計画ができあがると、次は実行です。「取組計画管理表」を作成して、神林さんが毎月の取組みを記入してメールで報告する、それに原田診断士がコメントを返すということを3カ月にわたって行いました。

経営改善計画の要旨

No項目具体的な取組み
1単価アップ①半年後の値上げに向けた地ならし
②会員向けのキャンペーンにおいて持ち込み点数に応じた割引
③店頭でのしみ抜き剤・洗剤の販売
2従業員教育④パート従業員によるマニュアル作成
⑤タブレット端末の導入
⑥従業員との個別ミーティングの実施

04 活動の成果

従業員との話し合いで気付いたこと

取組みを終えて、活動の総括を行いました。神林さんによると、最大の成果は、従業員と個別にミーティングを行ったことでした。それにより、従業員が何を考えているかを知ることができました。話し合いの中から、従業員から仕事のやり方の具体的なアイデアが出てきました。それらはすぐに実行に移し、提案者に任せることで従業員のやる気が高まりました。さらに社内の風通しが良くなり、工場での効率が大幅にアップしました。

相談者・神林章二さんの話

ファミリークリーニング店長 神林章二様

原田先生の話を聞き、スタッフと話し合うことをしてなかったことに気づき、一人一人と30分くらいかけて個別ミーティングを行いました。これにより、スタッフのことを知るとともに、仕事に関する意見やアイデアを聞くことができました。毎週木曜日に「朝の会」を開催することにし、ミーティングで出た課題や、「クリーニングNEWS」の記事などをネタに皆で話をするようにしました。現在は午後3時を「おやつタイム」とし、おやつとドリンクを用意して、スタッフ全員と私で、わいわい楽しく話をしています。以前と比べると、私とスタッフ、そしてスタッフ間で気軽にコミュニケーションが取れるようになり、スタッフに任せることもできるようになりました。

専門家からのアドバイス

株式会社トモデザイン 代表取締役 原田智弘 中小企業診断士

改善計画は、「収益性の向上」と「従業員の教育・定着」という2つの観点から、具体的な事例をもとに作成しました。その一環として、従業員との個別ミーティングを取り入れました。経営者が従業員と1対1で話すことは非常に重要です。従業員の不満や問題点を丁寧に聞き取ることで、現場の声を業務改善に活かせます。さらに、この対話を通じて信頼関係を築くことで、従業員の定着率が向上し、長期的に活躍する人材を育成できます。結果として、職場全体のモチベーションや生産性の向上にもつながります。ぜひ個別ミーティングを実施してみてください。