創業相談に来られる方から、こんな質問をいただくことがあります。
「確定申告は必要なんでしょうか?また、開業届って出さないといけませんか?青色申告・白色申告ってよく聞くんですが、創業するときはどちらを選んだらよいですか??」
複数の内容が含まれていますが、類似の質問ということでまとめて聞かれることが多々あります。
本ページでは、次の3つのポイントについて説明しています。
- 確定申告は必要である
- 開業届の提出は必要である
- 青色申告は白色申告より様々な面で優れているが、記帳方式が複雑になる(必要書類が増える)
確定申告、開業届の提出は必ず実施しましょう。コロナウイルス感染症関連給付金・補助金・助成金などの相談を受けることがありましたが、「確定申告をしていない」、「開業届を提出していない」などの理由により、必要書類の準備に手間がかかってしまったり、なかには支援そのものが受けられないというようなケースがありました。
創業すると確定申告は必要なのか?
青色申告であろうが、白色申告であろうが確定申告は必要です。つまり、確定申告は必ず行わなければなりません。例外(所得金額20万円未満など)はありますが、継続的にビジネスを展開して利益をあげていくことを前提に考えると、「創業すると確定申告は必要」と覚えておいてください。
国税庁のホームページに「確定申告が必要な方」について記載があります。詳細を知りたい方は参考にしてください。
個人事業主の確定申告とは?
1月1日から12月31日までの1年間の所得にかかる税額(所得税など)を計算し、申告期限までに税務署に必要書類を提出して、申告・納税する手続きのことです。(納税は国民の義務)
法人の確定申告とは?
会社法で義務付けられている決算書を作成し、法人税およびその他税金の申告をすることをいいます。
確定申告では、白色申告制度を用いて申告するか、青色申告制度を用いて申告するかの2通りあります。
創業すると開業届は提出しなければならないのか?
個人事業主の開業届
原則として提出しなければなりません(所得税法により定められている)。しかし、未提出や提出が遅延した場合の「罰則」が設けられていないため、「出さなくていい」という解釈が広がっています。
所得税法第229条
「居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、・・・(中略)・・・その事実があつた日から1月以内に、税務署長に提出しなければならない。」
開業届提出のメリット
- 青色申告を選択できる。(詳細は後述)
- 屋号つきの口座を開設できる。
- 自治体や国の支援策(補助金・助成金、小規模企業共済、特定創業支援等事業など)を活用するときに必要となる。
法人の開業届
法人登記を行った後、法人設立届出書を提出する必要があります。
白色申告と青色申告の違い
白色申告
開業届を提出する際、青色申告の届出をしなければ白色申告となります。白色申告は申告方法やそれに伴う記帳がシンプルです。そのため、白色申告を選択する人は、青色申告のメリット(後述)よりもわかりやすさ・簡潔さを重視する方が多いです。例えば次のような方が該当します。
白色申告を選択する人の傾向
- 数値計算や管理に不安がある人
- 管理・作業に関するコストを削減したい人
- 利益目標が小さい人(空いた時間で少し収入を得たい人、副業で少し稼ぎたい人など)
白色申告のデメリット
青色申告のメリットを享受することができないという点です。
令和2年の持続化給付金や家賃支援給付金などの支援施策では、提出書類が異なるものの、青色申告でも白色申告でも申請することができました。
青色申告
白色申告よりも青色申告を選択したほうが様々な優遇を受けることができます。記帳方式が複雑になりますが、会計ソフトで入力・管理はできますし、税理士による確定申告の無料相談会(商工会議所など)や、よろず支援拠点や青色申告会でサポートを受けることもできますので、特段の理由がない場合は、青色申告をおすすめします。青色申告を選択する場合は、申請が必要となります。
青色申告の申請期限
創業の時から青色申告の申告を行いたい場合(新規に開業した場合)は、開業の日から2カ月以内に申請が必要となります。
これまで白色申告を行っていて、青色申告に切り替えたい場合は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに申請が必要となります。(Y年1月1日~Y年12月31日までの1年間についてY+1年2月~3月に青色申告で確定申告をする場合は、Y年3月15日までに申請が必要)
※提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
その他、相続が発生した場合は別期限が設けられています。
詳しくは国税庁のホームページに記載がありますので、参考にしてください。
青色申告のメリット
1.青色申告特別控除(個人事業主のみ)
2020年の確定申告から、複式簿記での記帳により青色申告特別控除55万円を受けることができ、さらにe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を活用すれば+10万円(最大65万円)まで控除されます。
複式簿記でなく簡易簿記の場合は、最大10万円の特別控除となります。
売上 - 経費 = 利益 ≒ 課税所得となりますが、課税所得に適応税率を掛けることで税額が決まります。特別控除を適応すると、(課税所得 - 特別控除)に適応税率を掛けることで税額が決まりますので、税額が少なくなるというメリットがあります。
2.赤字の繰り越し
個人事業主の場合は最大3年間、法人の場合は最大9年間赤字を繰り越すことができます。
3.青色専従者給与
事前に届出が必要となりますが、同居親族への支払給与を経費にすることができます。(青色専従者給与)
「専従者」とあるように、「青色申告者の事業に、6か月を超える期間専従していること=専ら従事していること」が必要となります。