創業するときに、自己資金だけでは資金が足りない場合は、資金調達をする必要があります。

代表的な資金調達の方法は、次のようなものがあります。

  1. 金融機関からの借入(融資)
  2. 親族・知人からの借入
  3. 出資を募る(資本金)
  4. クラウドファンディング
  5. 補助金

本コンテンツでは、創業融資(金融機関からの借入)について詳しく解説します。その他の創業時の資金調達の方法については、下記をご覧ください。

創業融資の種類

金融機関の責任が100%の融資を「プロパー融資」といいます。プロパー融資では、借入を行った事業者のビジネスがうまくいかず返済できなくなった場合、金融機関がリスクを100%負います。

創業時にいきなり銀行に行ってプロパー融資を受けようとしても、基本的には断られます。なぜなら、まだ事業を開始していないため、信用力が乏しく、金融機関が背負うリスクが高いからです。

しかしながら、創業時に融資が受けられなければ、大半のビジネスは始まりません。そのため、そんな信用力の乏しい創業者が融資を受けられるようにするため、国や自治体がサポートしてくれています。創業時に活用できる融資は大きく分けると2種類あります。日本政策金融公庫の新規開業資金各自治体が設けている中小企業制度融資です。複数の金融機関から融資を受けることを協調融資といいますが、創業時に公庫の融資と制度融資により、協調融資を受けることもできます。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫(旧:国金)(以下、公庫)は、政府が運営する金融機関で、日本全国に支店があります。創業時に民間金融機関からの借入れが難しいため、政府系金融機関の日本政策金融公庫が融資を受けられるような仕組みを作っている、という考え方ができます(この考え方により、公庫が一番借りやすい、と言われています)。

新規開業資金

公庫では、創業・スタートアップ時の融資として、「新規開業資金」を扱っています。融資申し込み(面談)から融資実行まで1カ月程度が目安です。

対象者要件と自己資金要件を満たしている人が利用できます。

対象者要件

新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方

日本政策金融公庫 新規開業資金の概要

新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人です。創業時は無担保・無保証人で借りることができます。

自己資金要件

2024年3月までは自己資金要件として、必要資金の10分の1以上の自己資金が必要でしたが、2024年4月からは自己資金要件がなくなりました。

ただし、この自己資金要件は「融資の申し込みができる要件」であり、必ずしも融資が受けられるわけではありません。「自己資金不足」ということで融資が受けられないケースもありました。

現実問題として、融資を受ける際に自己資金は必要です。必要資金の2割~3割程度を目安に準備しましょう。

融資限度額

7,200万円(うち運転資金4,800万円)

日本政策金融公庫 新規開業資金の概要

融資限度額は7,200万円となっていますが、現実的には1,000万円が目安です。1,000万円を超える融資を受けたい場合は、公庫と制度融資の協調融資を検討しましょう。

また、据置期間については「据置期間5年以内」と記載がありますが、こちらも半年~1年程度が目安だと思われます。

融資を受けられなかった場合

もし公庫から融資を受けられなかった場合は、その理由を必ず確認しましょう。例えば、「事業規模が大きく投資が過大となっている」というような理由であれば、事業計画書を再作成し、再度融資の申請を行うと融資を受けられることもあります。「融資を断られた場合、半年程度は再申請できない」という情報もありますが、創業時には半年を待たずに再申請できることもあります。

公庫の特徴

公庫には口座がない

公庫はお金を貸し付ける業務はありますが、お金を預かる業務がないため、口座がありません(公庫に口座を作ることはできません)。借入・返済を行う口座は民間の金融機関の口座を利用することになります。

経営アドバイスを受けにくい

公庫はお金を貸し付ける業務がメインであるため、制度の案内はしてくれますが、民間の金融機関と比較すると経営のアドバイスを受けにくいというデメリットがあります。

どの支店に融資を申請すればいいか?

公庫は日本全国に支店がありますが、「どこの支店に行けばいいのか?」という質問もよくいただきます。

一般的には、個人事業主は住所エリアの支店または事業エリアの支店に融資を申し込むことになるでしょう。例えば、A市に居住していてB市でビジネスを行う場合は、A市またはB市の支店を利用することになります。

法人の場合は、本店所在地または支店所在地の公庫支店に申し込むことになります。

詳しくは最寄りの支店にお問い合わせください。

各自治体の中小企業制度融資

制度融資とは?

金融機関、信用保証協会、都道府県などの各自治体が連携して提供する融資です。県や市によって設けられる制度であるため、自治体によって制度融資の内容は変わってきます。

※「〇〇市 制度融資」、「△△県 制度融資」というキーワードで検索してみてください。

制度融資のなかに、「起業資金融資」や「創業資金融資」などのメニューがあれば、それを活用することになります。もしそのようなメニューがない場合は、一般貸付などの活用できる他のメニューを確認してみましょう。

どの自治体の制度融資を使えるのか?

個人事業主は、住民票がある市区町村の制度融資、または都道府県の制度融資を活用できます。例えば、A市に居住していてB市でビジネスを行う場合は、A市の制度融資を利用することになります。

法人の場合は、本店所在地または支店所在地の制度融資を活用することになります。詳しくは各自治体にお問い合わせください。

制度融資の登場人物は3人

制度融資の登場人物は、金融機関、信用保証協会、各自治体の3人(3者)です。3者それぞれに申請・申込を行い、3者がそれぞれ審査します。3者すべての審査に通らなければ融資を受けることはできません。

3者の審査があるため、融資申し込み(面談)から融資実行までスムーズにいけば、1.5カ月程度が目安です(自治体によって異なるため、詳しくは確認してください)。

金融機関

制度融資を活用した場合、直接契約を結ぶ相手(お金を借りる相手・お金を返す相手)は金融機関になります。制度融資に対応している地方銀行から好きな金融機関を選ぶことができます。都市銀行を選ぶことができる制度融資もあります。

信用保証協会

信用保証協会とは、政府が運営する保証人になってくれる機関です。制度融資では、信用保証協会が保証人になってくれます。もし金融機関に返済できなくなった場合は、信用保証協会が代わりに弁済してくれます(代位弁済)。そのため、金融機関は貸付のリスクを少なくすることができる、すなわち融資をしやすくなる、ということになります。

通常、信用保証付きの融資では信用保証料という手数料が発生します。自治体によっては、制度融資で信用保証料の補助を出すところもあるため、保証料の負担を軽減(もしくは負担なし)することができます。

各自治体

制度融資を扱っている窓口は、都道府県や市区町村の自治体です。金融機関の担当者によっては、制度融資のことを詳しく知らずに間違えた情報を伝えてくる方もいます。そのため、制度融資の問い合わせは自治体にするとよいでしょう。

借入限度額について

借入限度額については、2点把握しておきましょう。

1点目は資金使途(お金の使い道)によって、各自治体の制度融資ごとに決められている点です。設備資金・運転資金併用の場合もありますので、いくらまで借りられるのか?を確認しましょう。

2点目は登場人物のなかの信用保証協会の保証金額内において、融資を受けることができるという点です。保証人が600万円までしか保証しない、ということであれば、700万円は借りられないということですね。その場合は、足りない100万円を公庫から借りるか、事業規模を縮小するか、などを検討する必要があります。

補足ですが、信用保証の保証金額内であれば、複数の金融機関から融資を受けることもできます。例えば、保証協会が保証してくれる金額が600万円であった場合、500万円をA銀行から、100万円をB銀行から融資を受けるというようなケースです。複数の金融機関から融資を受けることは、将来的な金融機関との付き合い・関わりを考えるとよいと言われています。例えば、A銀行が貸してくれない場合でも、B銀行が貸してくれる可能性もあります。しかしながら、創業時に複数の民間金融機関から借入をするケースはあまりありません。希望額の融資を受けることができなかった場合は、信用保証の保証金額内であれば、別金融機関に申請することはできます。

制度融資の借入限度額を超える場合は、選択肢として公庫との協調融資があります。公庫と制度融資の協調融資の際、民間の金融機関に話を持っていくと「先に公庫に融資を申請してください」、と言われることが多いです。政府系金融機関の審査で融資可能と判断されれば、民間の金融機関も安心できるというわけです。公庫と制度融資の協調融資では、3ヵ月程度はかかると考えておきましょう。

自己資金要件について

自治体によって、自己資金要件がある場合があります。詳細は各自治体の制度融資の内容を確認しましょう。

自己資金なし・自己資金ゼロでも融資は受けられるのか?

日本政策金融公庫の自己資金要件を満たすものとする要件を満たせば(詳細は上記に記載しています)、自己資金ゼロでも理論上は融資を受けることはできます(融資の申し込みはできます)が、現実的には融資を受けることができないケースがほとんどです。自己資金がない場合は、融資以外の方法(クラウドファンディングや出資など)で資金調達を行いましょう。