創業相談・経営相談で「補助金制度について教えてください」という質問があります。他にも、「先日機械を購入したのですが、何か補助金使えませんか?」というような質問もあります。

本コンテンツは、具体的な補助金制度の紹介ではなく、補助金制度そのものに関するよくある質問を整理し、紹介しています。使える補助金制度を探す前に把握しておきましょう。

※一般消費者向けでなく、事業者(個人事業主・法人)向けの内容となります。

補助金と助成金の違い

最初に、補助金と助成金を混同している方が多いので、両者の違いをまとめました。

補助金とは?

補助金とは、国・自治体が設けている補助金制度に申請手続きを行い、採択されたら原則返済不要で支給されるお金です。国の補助金制度は、経済産業省のものが多く、代表的なものは事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金などがあります。2023年現在では、物価・エネルギー価格高騰により、省エネが求められていることから、環境省の省エネ関係の補助金も多くあります。

助成金とは?

助成金は補助金に似ていますが、従業員が働きやすい労働環境を整備したり、研究開発を行ったりするために支給されるお金です。つまり従業員のための取り組み計画に使うお金です。労働環境改善ということから厚生労働省管轄のものが多く、助成金申請は社会保険労務士の独占業務となります。助成金は申請要件・基準を満たせば給付されるものが多いですが、就業規則の見直しが必要となったり、従業員を雇用していない事業者は申請できなかったりする可能性があります。その他、企業の基金などが研究開発のために独自に助成している場合もあります。

補助金制度活用の流れ

代表的な補助金制度活用の流れを紹介します。

  1. 公募開始

    公募が開始されると同時に、公募要領が公開されます。公募要領には、補助金制度の目的、対象者、補助対象経費(補助金対象となるもの)、補助率・補助金額上限などが記載されていますので、目的の補助金の公募要領はしっかりと読みましょう。補助金制度には「申請期間:〇月〇日~△月△日」のように期間が定められていますが、スケジュールがタイトになる(例:7月1日~7月31日)ことが多いです。申請期間内に「③申請書類の提出」まで行う必要があります。

  2. 事業計画書の作成・必要書類の準備

    公募要領には申請要件が記載されていますので、申請要件を満たす事業計画書を作成する必要があります。当該事業計画書に基づいて審査が行われます。

    まずは事前の申請要件を満たすことを確認しましょう。例えば、「令和4年5月から令和5年4月のうち、任意の3ヶ月の合計売上高または売上総利益が前年又は前々年の同期と比較して減少している事業者」、「小規模事業者であること(業種・従業員数による)」のようなものがあります。申請要件を満たしていない場合、事業計画書を作成して申請しても対象外となります。

    続いて、計画に係る申請要件を満たしながら、事業計画書を作成しましょう。例えば、「事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする。」のようなものがあり、数値計画を立てるときに要件を満たさなければなりません。

    その他必要書類としては、決算書(確定申告書)や税の滞納なし証明書などがよく求められる書類です。

  3. 申請書類の提出

    事業計画書含む申請書類一式が揃ったら、申請手続きを行います。国・自治体もデジタル化を進めていますので、Web上でのオンライン手続きが必要となるケースが増えてきています。

    国の補助金は補助金システムを活用するため、「GビズID」が必要となります。IDの申請~発行まで、2週間程度かかると言われていますので、早めにIDを取得しておきましょう。

  4. 補助金交付候補採択結果発表

    申請手続きが終わったら、採択結果の発表を待ちます。採択結果とは「事業計画を審査した結果、補助金受給の権利が与えられました」ということで、事業計画書の合格発表です。

    ※⑤交付申請・交付決定が一緒になる補助金もあります。

  5. 交付申請・交付決定

    採択された後、交付申請という手続きを行います。業者から見積もり書を取り寄せて補助金額の確定申請(交付申請)を行い、補助金の金額を確定する(交付決定)ための手続きです。

    採択は事業計画書の合格発表ですが、交付申請・決定は補助金額の確定です。

    補助対象経費として認められず、採択のときと比べてもらえる補助金が減少する可能性もあります。

    ※④採択結果発表と一緒になる補助金もあります。

  6. 補助事業開始~補助事業終了

    「補助事業」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、申請した事業計画書の実行を意味します。具体的には、設備やITシステムの発注・導入・支払などを行います。

    補助事業終了期日は決められているので、期限を守って補助事業を実施しましょう。

  7. 実績報告書作成・提出

    補助事業の実績報告書を作成します。導入設備の写真や領収書、試運転の結果、補助金入金口座の通帳コピーなどを取りまとめて提出します。

    実績報告書の提出期限も決められていますので、期限は遵守しましょう。

  8. 補助金入金

    実績報告書が受理されて内容に問題がなければ、補助金が入金されます。

「①公募開始~⑧補助金入金」までの基本的な流れを紹介しました。決められた手順を守らなければならない、ということは覚えておきましょう。

よくある誤解・質問

続いて、補助金制度に関するよくある誤解と質問を紹介します。

補助金は必ずもらえるわけではない

「補助金は必ずもらえる」と勘違いされる方もいますが、必ずもらえるわけではありません。

提出した申請書類の確認および事業計画書の審査を経て、採択されるかどうかが決まります。書類の不備がなくても、事業計画書の審査によっては補助金支給対象外となることもあります。

先日機械を購入したのですが、何か補助金使えませんか?

上記の補助金制度活用の流れにあるように、スケジュールが決まっています。例えば、①~③においては、公募の申請期間内に書類を用意して申請しなければなりません。⑥、⑦も期日が決められているので、それまでに補助事業と実績報告を完了しなければなりません。

一番間違えやすいのは、「⑤の交付申請・交付決定の後に⑥補助事業開始~終了」となる点です。具体的には、⑥に進む前に支出した補助対象経費のものは、補助金対象外です。すなわち、すでに購入した機械設備は補助金対象外です。「先日機械を購入したのですが、何か補助金使えませんか?」という質問がありますが、基本的にすでに購入したものに対して活用できる補助金制度はほとんどありません。事前着手・事前完了が認められる補助金制度もありますが、例外だと考えておいた方がよいでしょう。

別の視点で考えると、補助金制度を活用すると「⑥になるまで補助対象経費の支出ができない」、つまり「⑥になるまで機械設備の導入ができない」ということになります。経営判断では、補助金を活用せずに融資で機械設備を導入したほうがいいケースもあります。

利用用途が決められている

例えば、うどん用の製麺機が欲しい場合、事業計画書にうどん用の製麺機を導入する内容を記載することになります。機械導入後、事業計画書に記載していないそばに機械設備を使ってはいけません(目的外利用になります)。

他にも、法定耐用年数の期間は、導入した機械を処分(売却・廃棄・譲渡など)してはいけません。

事業計画書の記載内容と、守らなければならないことに気をつけましょう。

車やパソコンに補助金を使いたい

車やパソコンは汎用品という扱いになります。利用用途以外のことに使えてしまうため、補助金対象外となることが多いです。キッチンカーに補助金を使いたいという相談も寄せられますが、車自体は補助金対象外、キッチンカーの内装工事は補助金対象となるケースはあります。詳しくは各補助金の公募要領を参照し、判断できない場合は補助金事務局に問い合わせて確認しましょう。

補助金はいくらもらえるの?

補助金制度ごとに補助率・補助上限額が設定されています。補助率とは、補助対象経費のうち、補助金が支給される割合を示すものです。補助上限額とは、補助金支給の上限額を示すものです。

注意点は「補助率10/10」のものは滅多にないということです。つまり、基本的には全額補助金が出るわけではなく、自己負担金が発生するということです。

補助率・補助上限額について、例えば「補助率 2/3 補助金額 上限250万円」のような記載がされます。この補助金制度について、下記2つのケースを考えてみましょう。

ケース1:600万円の設備を導入した場合

  1. 600万円 × 2/3 = 400万円
  2. 400万円 > 上限250万円

ケース1で補助金額を計算すると、補助上限額の400万円を超えてしまうため、補助金額は250万円となり、自己負担金額は350万円となります。

ケース2:300万円の設備を導入した場合

  1. 300万円 × 2/3 = 200万円
  2. 200万円 < 上限250万円

一方、ケース2では補助金額を計算すると200万円となります。補助上限額以内であるため補助金額は200万円、自己負担金額は100万円となります。

補助金が入金されるタイミングは「後払い」

基本的には補助金は後払い(清算払い)です。上記の補助金制度活用の流れにあるように、領収書などを揃えて実績報告をした後に「⑧補助金入金」です。「⑥補助事業開始~補助事業終了」で発生する補助対象経費の支出は一時的に立て替えておかなければなりません。立替金が不足している場合は、資金を準備する必要があります。

※補助金制度によっては、事前に補助金を支払ってもらえる「概算払い」制度が使えるものもあります。