2018年2月28日に政府統計による平成29年賃金構造基本統計調査が公表されました。現在の歯科技工士・歯科衛生士の給与・年収等の労働条件についてまとめました。

※注意:労働者数(調査対象者数)が少ない場合には標本誤差が大きくなることもありますので、あくまで参考としてください。

企業規模別調査のまとめ

企業規模 10~99人

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数231人2,016人
平均年齢47.9歳34.9歳
平均勤続年数13.3年5.7年
実労働時間171時間166時間
超過労働時間12時間7時間
月収326,800円237,400円
賞与(ボーナス等)484,500円350,800円
年収4,406,100円3,199,600円

企業規模 100~999人

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数122人369人
平均年齢37.9歳34.0歳
平均勤続年数11.0年5.9年
実労働時間160時間169時間
超過労働時間26時間6時間
月収259,000円235,000円
賞与(ボーナス等)511,100円505,600円
年収3,619,100円3,271,600円

企業規模 1,000人以上

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数193人284人
平均年齢32.2歳37.3歳
平均勤続年数6.9年8.5年
実労働時間186時間160時間
超過労働時間35時間7時間
月収264,600円271,300円
賞与(ボーナス等)768,000円731,800円
年収3,943,200円3,987,400円

合計(10人以上)

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数546人2,669人
平均年齢40.1歳35.1歳
平均勤続年数10.5年6.0年
実労働時間174時間166時間
超過労働時間23時間7時間
月収289,700円238,400円
賞与(ボーナス等)590,500円412,700円
年収4,066,900円3,273,500円

歯科技工士と歯科衛生士の比較

歯科技工士と歯科衛生士を比較すると、歯科技工士のほうが年収が高くなっています。この差の最も大きな要因は企業規模が10~99人の歯科技工士の収入が多いことによるものです。

歯科技工士の年収について

企業規模が大きくなればなるほど収入が増えるという傾向がありますが、10~99人の規模の歯科技工士は例外と言えます。超過労働時間(残業時間)を見ても大きな違いはないため、おそらく歩合制などによる賃金体系、また設備等に対する収益力の効率がよいと想定されます。

勤続年数について

歯科衛生士の勤続年数が離職率が高いと言われている歯科技工士より短い理由は、女性の結婚・出産・復職というライフサイクルによるものだと考えられます。産休・育休の制度がまだ整っていない企業が多い、もしくはそれらの制度の活用状況が悪いのかもしれません。

※調査データでは、1~9人の企業規模が入っていません。つまり、町の歯医者さんや個人経営の小規模な歯科技工所などに勤めている歯科技工士・歯科衛生士の年収が反映されていません。1~9人の小規模な歯科技工所は自費補綴物を製作しているところも少ないため、計(10人以上)の年収よりも少ないと思われます。しかしながら、なかにはCAD/CAMシステムを導入し自費補綴物の製作を手掛けている技工所や自費補綴物のみを扱っている技工所もありますので、一概には言えません。

勤続年数別調査のまとめ( 企業規模10人以上の統計 )

勤続年数0年

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数4人313人
月収153,800円202,800円
賞与(ボーナス等)0円35,500円
年収1,845,600円3,469,100円

勤続年数1~4年

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数94人701人
月収191,800円225,200円
賞与(ボーナス等)523,100円379,200円
年収2,824,700円3,081,600円

勤続年数5~9年

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数32人555人
月収272,300円240,100円
賞与(ボーナス等)696,500円433,700円
年収3,964,100円3,314,900円

勤続年数10~14年

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数43人340人
月収264,700円239,000円
賞与(ボーナス等)897,400円487,000円
年収4,073,800円3,355,000円

勤続年数15年

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数194人747人
月収334,900円262,000円
賞与(ボーナス等)678,500円542,400円
年収4,697,300円3,686,400円

合計

区分歯科技工士歯科衛生士
労働者数367人2,655人
月収282,500円237,800円
賞与(ボーナス等)657,900円409,800円
年収4,047,900円3,263,400円

歯科技工士と歯科衛生士の比較

勤続年数に対して年収を比較すると、歯科技工士は15年以上勤続すれば2倍以上の年収となることが分かりました。一方、歯科衛生士は15年以上勤続すると約1.3倍の年収となっています。昇給を考えると、歯科技工士のほうが大幅に有利であると言えます。

まとめ

歯科衛生士より歯科技工士のほうが年収が高いということが分かりました。また、15年以上勤続すれば当初の年収の2倍以上となります。しかしながら、歯科技工士は調査対象者数が少なく、データにばらつきがあることも認識しておく必要があります。また、地域格差もありますので勤務地も考慮して調べるとよいかもしれません。

インターネット上では歯科技工士は儲からないという声もありますが、ご紹介したように平均年収は約400万円です。日本人の平均年収は420万円と言われていますので、数値だけを比較すると大差はありません。

なお、調査データは歯科技工士・男性のものです。日本人の男性平均年収は約510万円ですので、男女別となると大きな違いが発生しますが、年収1億円などの歯科技工士の層がほとんどいないことから、歯科技工士の平均年収としては信憑性は高いと思われます。厳密には中央値で調べた方がよいので、年収は参考としてください。

歯科医療の将来について考えると、早急に歯科技工士の職の認知度を向上させるとともに仕事の魅力を伝え、労働環境の改善を通じて歯科技工士を目指す人を増やしていく必要があります。

歯科技工士も歯科衛生士もとてもやりがいのある専門職です。これから目標とする方、そして現在不安・不満を感じている方の参考になれば幸いです。

※参考 平成29年賃金構造基本調査