先日、歯科技工士の国家試験の合格発表がありました。合格した方はこれから歯科技工士として仕事をします。この時期、すでに就職先が決まっている人も多いと思います。まだ決まってない方、将来的に就職先を決めることになる方、そして転職を考えている方に、歯科技工士としての就職先の選び方をお伝えします。

ポイント1 就業先

歯科技工士の就業先として、次のようなデータがあります。

1位 歯科技工所 71%

2位 歯科診療所・病院 28%

3位 その他 1%

その他には、歯科器材メーカーや歯科材料関連企業、歯科技工士教育機関などがあります。ほとんどが歯科技工所で働き、一部が歯科診療所・病院で働いているということが分かります。女性に人気があるのは歯科診療所・病院です。それぞれの特徴は次の通りです。

歯科技工所

歯科技工の技術力を身につけやすい環境にあります。募集しているところも多いため、比較的入社しやすいという点もあります。

歯科診療所・病院

実際に患者の口腔内を見ることができ、自分が製作した補綴物がどのように使われるかを確認できる環境にあります。歯科医師や歯科衛生士などと直接話しながら、色々な臨床の知識を得ることができます。

その他

歯科技工士の知識・技術をベースとして、歯科用の器材や材料を販売する企業などがあります。募集は営業職が多く、各歯科医院を訪問したり、展示会などで説明したりします。

ポイント2 仕事内容

仕事内容・仕事の範囲も就業先によって異なります。まずはどの分野(歯冠修復、義歯、矯正装置、CAD/CAMなど)の仕事をしたいのかを決めましょう。一般的に歯冠修復を手掛ける人は多いですが、これからの高齢社会では義歯の需要は増してくるでしょう。そして、将来的に保険の補綴物を手掛けたいのか、自費の補綴物を手掛けたいのかを考えましょう。歯科技工所や歯科診療所でも、保険のものだけを扱い、自費のものは外注とするところもあります。自費の補綴物を製作したいと思っていても、就業先にその機会がなかったり、器材がなかったりという場合は難しいかもしれません。

歯科技工所

ワックスアップから研磨・仕上げまで一連の作業を担当するように患者単位で仕事をするところと、ワックスアップ専門・排列専門など作業によって仕事が分かれているところがあります。前者では総合的な技工技術を磨くことができ、後者では特定作業に特化して技術を身に着けることができます。特定の分野(歯冠修復、義歯、矯正装置、CAD/CAMなどのいずれか)の仕事を任させることが多く、また、保険担当・自費担当というような担当もあります。

歯科診療所・病院

歯科診療所・病院では、印象に石膏を流し模型を製作する作業があります。その後、医院で製作するか外注するかの振り分けを行います。実際に患者が来られて対応するため、急ぎの仕事もあります。例えば、義歯(入れ歯)の修理やテックの研磨などです。色合わせ(シェードテイキング)は実際に患者の口腔内を見ながら確認できます。患者を長時間待たせるわけにはいきませんので、時間を意識しながら作業をする必要があります。歯科診療所・病院の体制にもよりますが、歯冠修復をしたり義歯を製作したりと分野によらず、幅広い技術が求められます。

その他

展示会などでは実際にシミュレートしながら、その器材のよさ・使い勝手などを説明することもあります。各企業の扱う製品特性や商品知識などを身につけなければなりません。

ポイント3 労働環境・労働条件

人によって重視する点は異なりますが、労働環境・労働条件についていくつかピックアップしました。

勤務時間や残業の有無

歯科業界は医療サービスです。基本的に歯科診療所・病院の勤務時間によることになりますが、月曜日~土曜日まで仕事があります。歯科技工所では残業が多いと言われており、それ故歯科診療所への勤務を希望する歯科技工士もいます。歯科診療所の歯科技工士は一度就職するとなかなか退職しない傾向にあるため、募集がないことも多々あります。各歯科技工所も労働環境の改善に向けて、残業時間を減らしたり、休日を増やしたりという動きが徐々に見られます。

個人経営か法人か

多くの歯科診療所や歯科技工所は個人経営です。経営者の年齢によっては、ご自身が一生そこに勤めることになるとは限りません。その場合は次の職場を探すことになりますが、それまでにどういう知識・技術を身につけておくか、将来はどのような歯科技工士になりたいかを考えておきましょう。

社会保障の有無

個人経営の場合、社会保障がどの程度あるかも気にしたほうがよいかもしれません。他にも女性の場合は産休や育休などの制度があるかも確認しておくとよいでしょう。

歩合制か固定給か

歯科技工所によくみられる賃金体系として、歩合制があります。作れば作る分、給与に反映されますが、病欠などの場合は大きく収入が下がります。また、歩合制は収入を増やしたいがために残業をするという傾向があります。

まとめ

いかがでしょうか。就職先を決めるのはとても大変です。全ての希望条件に合うところはないことが多いです。ですので、自分の中で何を優先して希望するかという形で、希望条件に優先順位をつけることをおすすめします。そして出来るのであれば、見学をしましょう。働いている人や雰囲気は実際にそこに行ってみることで把握できます。長期的に勤めるためには、人間関係も大切です。

最後に歯科技工所、歯科診療所・病院の就業先としての概要をまとめます。参考にしてください。将来歯科技工士として活躍されることを願っています。

歯科技工所

基本的に担当制が多いです。仕事の内容としてどの分野をやりたいか、仕事の範囲としてどのように手掛けたいかを考えましょう。残業が多いと言われていますが、昨今は労働環境の改善に向けた動きが見られます。技工物の製作スピードを求められることがあり、歩合制となっている就業先も多くあります。

歯科診療所・病院

歯科技工所と比較すると残業が少ない傾向にあります。求められる能力は範囲が広く、歯科医師や患者などと直接接することができます。社会保障も歯科技工所と比べると充実しているところが多いですが、人気が高く募集自体あまりありません。また、性格の不一致等で退職する歯科技工士も少なからずいることから、歯科医師とうまくやっていけるかという点もポイントとしてあります。女性の歯科技工士の場合、なかには受付や助手などの業務を一部任されることもあるようです。