昨今、IT技術の普及により様々な事業領域でIT技術が活用されるようになりました。中小企業でも財務・労務関係のパッケージソフト、クラウド技術を利用しているところが多くあります。
歯科業界にもITの波は押し寄せ、近年ではCAD/CAMシステムが浸透しています。
今回は「CAD/CAMとは?」という方のために説明したいと思います。
CAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計)
CADとは、コンピュータを活用して設計するシステムのことです。2次元CADから3次元CADに進化し、次の3つに分けられます。
①ワイヤーフレームモデル
点と点を結んだ線で表現(例 針金細工のイメージ)
②サーフェスモデル
面の集合で表現(例 提灯のイメージ)
③ソリッドモデル
中身の詰まった物体(例 粘土細工のイメージ)
CAM(Computer Aided Manufacturing:コンピュータ支援生産)
CAMとは、コンピュータで製品の生産情報を作成するシステムです。
CADで設計したデータを取り込みます。
簡単に言うと、CADで作ったものを加工できるように手順・条件等をCAMで割り当て、加工機械に渡すということです。
もともとはCAD、CAMは別々のシステムでしたが、両者を連携したCAD/CAMシステムが多くのサービスで活用されています。工業界では、航空機・自動車・家電製品などに広く応用されています。
歯科業界のCAD/CAM
それでは歯科業界ではCAD/CAMはどのように活用されているのでしょうか。
- 最初に光学カメラで光学印象(お口の中の型の写真)を撮ります。
従来、型採りは歯医者で口の中にぶよぶよしたもの(印象)を入れていましたが、型採りをカメラ撮影で行います。患者さんの口の中を直接撮影する場合と、一度型を採り石膏模型にしてからそれを撮影する場合があります。
- CADシステムで歯を設計します。
CADシステムで歯を設計し、形態を整えます。コンタクトポイント(隣の歯との接触する点)、マージン(自分の歯と作った歯の境界線)、咬合高径(かみ合わせの高さ)、噛んだ時に接触する箇所などを調整していきます。
- CAMシステムで加工手順・条件を決定します。
詳細は割愛しますが、加工器具の選定、厚みの設定、材料の設定などを決めて入力します。
- 加工機械(ミリングマシン)で加工します。
専用の機械で歯を削りだします。イメージとしては、消しゴムを削って歯の形態を作っていくというようなものです。
メリット
- デジタルデータをもとに、何度でも作成できる。
- 技工作業の一部を自動化し、労力を削減できる。
- 均一で高品質な歯を作ることができる。
デメリット
- コストが高い。
- 全てを自動化できるわけではない。
CAD/CAMと3Dプリンタ
3Dプリンタ技術も発達してきましたが、CAD/CAMとは何が違うのでしょうか。
先にも述べましたように、CAD/CAMシステムによる歯の制作のイメージとしては、消しゴムを削って歯の形態を作っていくというようなものです。削っていくため、削りカスが出ます。
3Dプリンタはゼロから形態を再現するものです。設計通りに材料を重ねていって作り上げるイメージです。まだ技術的に発展途上であり、高度な設計情報が必要である、歯科材料を加工すること(造形)が難しいなどの理由から、実際に口の中に入れる歯をうまく再現できないことが多いのが現状です。
しかしながら、一部では入れ歯を3Dプリンタで製作するということもされていますので、これから技術が進歩すれば3Dプリンタも歯科業界でどんどん導入されていくと予想されています。