これまで株式会社の法人登記完了までの各ステップを紹介してきました。一連の手順については、下記の記事をご確認ください。

法人登記が完了したあともやらなければならないことが多くあります。そこで、今回の記事では各所への届出・手続きを紹介します。夫婦会社でのポイントも合わせてお伝えします。

法人登記完了後の届出・手続き

法人登記が完了した後の届出・手続きは、次のようなものに分類できます。弊社が実際に提出した夫婦会社で必要な書類について順番に説明します。これらの手続きには、履歴事項全部証明書や印鑑証明書などが必要となります。

※夫婦(役員)の経営コンサルティング会社の弊社が実際に行った届出・手続きに関してのみ紹介しています。弊社は許認可や特別な手続きは不要です。そのため、許認可の届出等に関しては掲載しておりません。また、書類の記載方法や具体的な必要な添付書類については、インターネット上にたくさん情報がありますし、様式は最新のものを使う必要があるため、本記事では割愛します。

会社・事業所の手続き

税務関係

①開業届(税務署・県・市)

必ず提出する必要があります。

②青色申告の承認申請書

青色申告を実施する場合は必ず提出する必要があります。

③給与支払い事務所の開設届出書

役員のみの会社であっても、役員報酬を支払う場合は、提出する必要があります。

④源泉所得税の納期の特例の承認申請書

通常、給与から天引きした源泉所得税は、翌月の10日までに納めなければなりませんが、当該申請書を提出することにより、半年に1度にまとめて納付することが可能となります。

⑤給与所得者の扶養控除等申告書

源泉所得税を計算する際、税区分として甲と乙があります。甲は乙より支払税額が低くなっています。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員・役員に支払う給与は、甲が適用されます。 つまり、当該申告書を提出することで、支払税額を少なくすることができる、というわけです。税法上、国内で給与を支給される従業員・役員は、源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず、原則として扶養控除等の申告を行わなければならないことになっています。毎年、年末調整で当年分の修正と来年分の作成・提出が必要です。

当該申告書は、会社から従業員・役員に渡して記入してもらい、最初の給与支払日前日までに会社に提出してもらう必要があります。遡って作成することはできないため、注意が必要です。提出後は会社でそのまま7年間保存する義務があります。税務調査の際、提出が求められることがあります。

2か所以上の会社から給与をもらっていて、別の会社に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合は、乙が適用されます。

弊社の場合は?

会社設立時から顧問税理士と契約しています。契約内容にもよりますが、弊社はこれらの書類の作成・届出は税理士の先生に依頼しました。届出のあと、電子データを受領し、保管しております。

また給与所得者の扶養控除等申告書については、令和4年分を作成していましたが、当年中に子どもが生まれたため、手書きで修正しました。

社会保険関係

①健康保険・厚生年金保険新規適用届

会社が健康保険・厚生年金保険の適用事業所になった場合に事実発生から5日以内に提出します。

②健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

役員・従業員に健康保険・厚生年金を適応するための手続き書類です。新規適用届を提出する際、一緒に提出しましょう。新たに加入すべき対象者が発生した場合にも提出します。

弊社の場合は?

②については、夫婦2名分を届出しましたが、2点注意点があります。

一つ目は、役員報酬の額に基づき社会保険料が決定されるため、役員報酬を記入する欄があります。そのため、あらかじめ月額いくらにするのかを決めておかなければなりません。

二つ目は、保険料を口座振替により納付する場合は、引き落とし口座が必要となります。しかし、銀行口座ができるまでには時間がかかるため、順番的には先に社会保険の加入手続きを行うことになります。その場合、銀行口座ができるまでは振込により納付する必要があります。口座が出来上がったら、忘れずに、速やかに、口座振替手続きを行いましょう。

金融機関関係

金融機関では、銀行口座の開設、クレジットカードの発行、融資申請などの手続きがあります。

弊社の場合は?

弊社は2つの銀行で口座を開設しました。銀行によって必要な手続き書類が異なりますので、あらかじめ確認しておくとスムーズに手続きできます。提出書類のなかに「事業内容が分かる資料」というものがあります。弊社は個人事業からの法人成りでしたので、個人事業のときの取引先との契約書の写し、実施したセミナーのチラシや送付したDMを提出しました。また、法人の名刺・ホームページは作成済だったため、これらも併せて提出しました。

クレジットカードは銀行の口座が開設してからの申請になるため(引き落とし口座の情報が必要)、銀行の口座が出来るまでの間にどのクレジットカードを申請するかについて検討しました。口座開設後すぐにクレジットカードを申し込みました。

融資申請に関しては、口座開設後にスムーズに申込みできるように、あらかじめ金融機関に相談しておきました。市の制度融資を活用して金融機関に申込んだため、申込先の金融機関の口座が必要となります。

役員(夫婦)の手続き

社会保険への切り替え

会社として社会保険加入の手続きを終えると、役員(夫婦)のもとに健康保険証が送られてきます。その後、これまで国民健康保険だった場合は、役所で国保から社保への切り替え手続きが必要となります。なお、年金の切り替え手続きは不要で、自動的に厚生年金が適応となります。

小規模企業共済の手続き

小規模企業共済とは、個人事業の経営者の退職金制度です。私は個人事業のときに小規模企業共済に加入していました。法人成りした場合に小規模企業共済の手続きが必要かどうかを確認しましたので、参考にしてください。

①法人成り後に個人事業を廃業した場合は、その時点で精算するか引き継ぎをするかを選択し、手続きが必要となる。

②法人成り後に個人事業を廃業しない場合は、そのまま継続加入で構わない(その場合は手続き不要)。会社の経費としては算入はできない。あくまで個人の確定申告で控除されることになる。