前回の記事で「【夫婦で会社設立】事前準備のポイント」を紹介しました。

今回は、定款の作成について紹介します。具体的な定款作成の方法はインターネット上に情報がたくさんありますし、司法書士の独占業務の範囲となる可能性もありますので、本サイトでは、夫婦で株式会社を設立するためのポイントをメインに解説しています。

※本サイトの夫婦会社は、株主=役員という前提で記載しています。

会社の所有権・経営権

発起人とは会社設立時にお金を出資する人で、取締役は会社を経営する人です。代表取締役は取締役のなかの代表者です。夫婦会社では、発起人=取締役(代表取締役)となると思いますが、資本金の出資額と株式の保有数について、よく検討してください。

例えば、「会社の資本金300万円とし、そのうち夫が200万円、妻が100万円を出資する」といった場合、株式の保有率は「夫:妻=2:1」となります。会社の意思決定を行う際、保有株数に応じて議決権をもつことになるので、このケースだと夫の決定が会社の決定となります。

逆のパターンがいい場合は、「会社の資本金300万円とし、そのうち夫が100万円、妻が200万円を出資する」となります。また、夫が全額出資し妻が役員として就任するケースのように、夫または妻のどちらかが全額出資する場合もあります。

なお、代表取締役は複数名でも構いませんが、就任承諾書(代表取締役)などが必要になります。また、法人印として、代表取締役の印鑑を複数作るのか、1つを兼用とするのかについて検討しましょう。詳しくは司法書士の先生に相談してください。

弊社の場合は?

資本金は全額夫の私が出資しました。代表取締役は私1名、取締役は私と妻です。取締役は「1人以上」、取締役の任期は株式の譲渡制限のある会社では10年が最長なので「10年」としました。出資者は私一人ですので、発起人は私だけです。

記載例

(設立時取締役等)
第○○条 当会社の設立時取締役及び設立時代表取締役は、次のとおりである。
設立時取締役    夫の氏名
設立時取締役    妻の氏名
設立時代表取締役  夫の氏名

(発起人の氏名ほか)
第○○条 発起人の氏名、住所、設立に際して割当てを受ける株式数及び株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
夫の個人住所(印鑑証明書通り。漢数字や英数字も合わせる。)
発起人 夫の氏名  ○○株、金○○万円

デジタル化・オンライン化で費用削減

電子公告

株式会社には決算公告の義務があります(一部の例外あり)。

公告方法は3つの方法があり、定款の公告方法で指定しますが、定款で公告方法を定めなかった場合には、官報に掲載する方法により行うとされています(会社法第939条)。

法務局のホームページには、電子公告について次のように記載があります。

第1  電子公告制度の概要
1  電子公告とは
 従来,会社が官報に掲載する方法又は日刊新聞紙に掲載する方法により行っていた合併,資本減少等の公告を,インターネット上のホームページに掲載する方法によって行うことをいいます(会社法第2条第34号等)。
 これにより,利害関係人は,インターネットを利用して,公告の内容が掲載されているホームページにアクセスすることによって,その内容を知ることができます。

法務局ホームページより

このように、電子公告とは自社ホームページ、外部ウェブサイトなどに公告を掲載する方法です。

電子公告のメリット

自社ホームページで掲載する場合は、賃貸対照表などの決算書類の掲載作業だけであるため、すぐに無料で公開できます。

電子公告のデメリット

ホームページに「5年分の貸借対照表(大会社においては貸借対照表と損益計算書)の全文」を掲載し続ける必要があります。つまり、長期に渡って誰でも決算情報を見れるようにしておかなければなりません。

また、公告には決算公告以外にも他のものがあります。もし決算公告以外の公告を電子公告で行おうとする場合は、調査機関に費用を払い調査をしてもらう必要があります。その場合、官報掲載よりも費用がかかる可能性があります。

弊社の場合は?

官報掲載の場合、毎年約7.5万円の費用がしてしまいます。そのため、毎年掲載する必要のある決算公告は電子公告にしました。また、電子公告に掲載すると調査機関依頼が必要となるその他の公告については、官報に掲載ということにしました。

定款では、電子公告のURLを掲載する必要はないため、掲載しませんでした。

記載例

(公告方法)
第○条 当会社の公告は、電子公告の方法により行う。ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告ができない場合は、官報に掲載する方法により行う。

電子定款

電子定款とは、デジタルデータで作成した定款のことです。定款には収入印紙を貼り付ける必要があり、収入印紙代は40,000円かかりますが、電子定款とすれば収入印紙は不要となり、コストを削減することができます。

しかしながら、電子データのやり取りだけで登記が完了する仕組みができていません。よって、電子定款を活用したとしても、公証役場での認証や法務局での登記申請は、結局現地に行かなければなりません。

電子定款活用の流れ

  1. 電子定款の作成
    • 定款の最後の文章を電子定款用に変更する。
    弊社の場合は?

    費用を抑えたかったので、電子定款にしました。

    記載例

    以上、株式会社○○設立のため、発起人は電磁的記録であるこの定款を作成し、これに電子署名する。

  2. 電子定款に電子署名
    • 電子署名ソフトを購入し、定款に電子署名をする。(例 Adobe Acrobat Reader有料版)
  3. 申請用総合ソフトの利用
    弊社の場合

    ソフトを利用して申請するためには、マイナンバーカードとICカードリーダーが必要となります。申請時にicカードリーダの初期化に失敗というエラーが何度も表示されてしまいました。原因は、マイナンバーカードの読み込ませるタイミングがシビアな点でした。画面の指示通りのタイミングで読み込ませてください。もしエラーになる場合は、一度申請用総合ソフトを再起動してリトライ、それでもできない場合はパソコンを再起動してリトライ、何度もこの作業を繰り返しました。

    このソフトの操作に慣れれば、会社設立後の履歴事項全部証明書や印鑑証明書の取得について、法務局に行かずとも、オンラインで請求できる(郵送で送ってもらうことができる)ので便利です。

  4. 電子定款の認証
    • 公証役場で電子署名をしてもらい、データをCD-Rに焼いてもらう。(現地に行く必要あり)
  5. 商業登記(会社設立)の申請
    • 法務局に申請書類一式(電子定款の入ったCD-R含む)を渡し、登記の申請手続きをする(現地に行く必要あり)